ある日の手作りデイジー
こんばんは、ぶんのいちです。約半年ぶりに音楽系の記事を書こうかと思います。
と言いつつも、今日のは自分のではなく、細野晴臣さんがinterFMでやってる「細野晴臣 Daisy Holiday!」のとある日の書き起こしです。
取り上げるのは、昨年10月の手作りデイジー。普段ゲストを呼んで楽しいおしゃべりをするこの番組だが、月頭は細野さんが1人でテーマを設けて楽曲特集を組む。それが手作りデイジー。
22年10月の手作りデイジーはポピュラー音楽・ポップス特集で、この放送が自分の中ではいわゆる神回となっている。この放送のおかげで、100年前の音楽にも手を伸ばすようになってしまった。本当なら音源を載せたい。ウッドベースのような細野さん特有の声とこの時代の音楽が、ものすごく心地よい旋律となって番組を組んでいる。でも、流石にそれは。
...ということで、せっかくなら文字にすることに。ご覧になった方が、古き良き音楽に興味を持たれるきっかけとなれば幸いです。
(衝動的にやって1時間で書き上げたので、冒頭の文章が少し雑な気もしますが、どうかご勘弁。)
【2022年10月2日放送】細野晴臣 Daisy Holiday!
(いつも通り、Artie Showのあの曲から、番組が始まる。)
はい、細野晴臣です。こんばんは。
今日はですね、いつもの特集をちょっと休んで、違う感じをやりたいんですが。リアルタイムで聴いてる方は途中で寝ちゃうんじゃないかなと、思ったりしてるんですけどね。何故なら、とても古いメロディのある唱歌のような歌を特集していきたいんですよ。
まあでも、最後に「とっておきの」をかけるので、ぜひ聴いていただきたいと思ってます。
大体、唱歌っていうのは日本に入ってきたのは大正時代、イギリスやアイルランド、スコットランドの歌が、日本人も好きだったんですね。その原点みたいなものを、今日はちょっとかけたいなと。
その多くは女性シンガーによるものなんですけど、やはりなんか、優しい気持ちになれるというか、母性を感じるし、癒やされるんですよ。ですから敢えて言えば、レクイエム(鎮魂曲)というような気持ちでかけていきたいと思うんです。
その前に、先月12日亡くなったRamsay Lewis(ラムゼイ・ルイス)。そのトリオの演奏をここで1,2曲かけていきたいと思うんです。ラムゼイ・ルイス、87歳でした。トリオのメンバーは"Redd" Hort(レッド・ホルト)という名ドラマー、Eldee Young(エルディ・ヤング)というベーシスト。Young-Holt Unlimited(ヤング・ホルト・アンリミテッド)というグループを作るんですね、ゆくゆく。
その素晴らしいミュージシャンと共にですね、ラムゼイ・ルイスっていうのはシカゴのブルースが基本になってるんですけど、なかなか多才なんですね。Bizet(ビゼー)作曲、"Carmen"をやってますね。"Habanera"というリズムです。
このレコーディングは1956年だと思うんですけどね。僕は初めてRamsay Lewis Trioを知ったのは1966年の彼らの大ヒット"The In Crowd"というライブバージョンを聞いてからですね。その後、"Barefoot Sunday Blues"というアルバムを買ってけっこう聴いてたんです。なんかすごく、ブルースフィーリングが好きだったんです。
後に、ドラマーのMaurice White(モーリス・ホワイト)が入ってきて、そのモーリス・ホワイトはEarth, Wind & Fireを作るわけですね。そういった人たちの先生に当たる、ラムゼイ・ルイスでした。
もう一曲、1960年のレコーディングで、"Put Your Little Foot Right Out"。
さーて、なんで僕はこの"Put Your Little Foot Right Out"という、古いスクエアダンスの歌なんですけど。なんでこの曲を選んだかって言うと、深掘りしていきたいんですよね。前もこれやったんですけどね。なんか気になるんですよ。
だって、Miles Davis(マイルス・デイヴィス)も演ってるんですから。
...えー、Sonny Stitt(ソニー・スティット)のソロがせっかく始まったのにすみません。
ちょっとお話しをしとかなきゃならないんですが、"Put Your Little Foot Right Out"という曲の原型は、なんとヨーロッパのポーランド発なんですよね。ワルシャワで流行ったマズルカの曲が"Varsoviana"という。
これが当時の古いスタイルの、イギリスに渡った頃のフィドル演奏ですけど、やってるのは最近の人でNed Pearson(ネッド・ピアソン)というバイオリニストです。
「ヴァルソヴィアンナ」あるいは「ヴィアンヌ」。これはですね「ワルシャワから」という意味なんです。
こちらが、アメリカに渡ったスタイルになって、スクエアダンスになったんです。
そしてそれが1953年の西部劇"Shane"という名作で使われたんです。Victor Young(ヴィクター・ヤング)のアイデアだと思うんですよね。
それを改作したのが、"The Eyes of Blue"。Martha Tilton(マーサ・ティルトン)です。
次の曲は1910年という古い歌です。ここで唄うのはSimone Stevens(シモーヌ・スティーブンス)。"Let Me Call You Sweetheart"。
さらに時代が遡って南北戦争の頃。1863年にStephen Foster(スティーブン・フォスター)が作った曲、"Beautiful Dreamer"。歌うのはMarthe Wainwright(マーサ・ウェインライト)、ギターはJim Campilongo(ジム・カンピロンゴ)。
ピアニストのPeggy Cochrane(ペギー・コクレーン)が語ってます。"ピカルディの薔薇"、1916年に発表されたHaydon Wood(ハイドン・ウッド)による名曲です。
この"Roses of Picardy"という曲はですね、作詞がFrederic Weatherly(フレデリック・ウェザリー)という人なんですけど、フランスの旅で出来た歌詞だと。
第一次大戦中の有名な曲の1つです。Jo Stafford(ジョー・スタフォード)の唄で聴きましょう。
(Didier Boutureによる"Love's Old Sweet Song"がかかる。ネット上、サブスクに音源なし。)
この美しい旋律。"Love's Old Sweet Song"。これは前の曲と同じく、イギリスの本当に古い歌曲です。正確に言えば、アイルランドの作曲家モロイ(James Molloy)と作詞家ビンガム(Clifton Bingham)によって発表されたのが、なんと1884年だったんですね。
アイルランドにはJames Joyce(ジェイムズ・ジョイス)という素晴らしい作家がいますけど、その"Ulysses(ユリシーズ)"という本の中でも引用さているということでも有名です。
では、その歌曲のバージョン。これは1950年に発表された、Jo StaffordとGordon MacRae(ゴードン・マックレー)のデュエットによる「懐かしき愛の歌」。
9月8日に亡くなられたエリザベス女王。COVIDの最中にスピーチを遺してます。「We'll Meet Again」
それを唄うのは、Vera Lynn(ベラ・リン)。第二次大戦中のイギリス軍の恋人として大人気でした。
エンディングはThe Dining Sisters(ダイニング・シスターズ)に繋げてあります。"We'll Meet Again"。
(曲が途中でシームレスに繋がり、ベラ・リンの歌唱からダイニングシスターズの歌唱へ移る。)
(このまま語りが入ることなく、ED曲。番組が終了する。)
References
-
オンエア曲リスト(interfm HP)。
www.interfm.co.jp - 岡田崇氏の"LI'L DAISY"。
終わりに
今回は細野さんの放送をそのまま書き起こすだけでしたが、いかがでしたでしょうか。
私自身、この放送によって、ポピュラー・ビッグバンド・ジャズなどといった新しいジャンルを開拓させられてしまい、今ではポール・ホワイトマンからちびちび聴き始めてしまっています。
この放送の細野さんに憧れて、昔から書きたかったクリスマスソングの記事も書いたりして。とにかく、インパクトの大きな放送回でした。
冒頭にも申し上げました通り、古き良き音楽に興味を持つきっかけとなれば幸いです。